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ダイソンキャニスターのすすめ

はじめに

皆様はじめまして。千佳(ちか)と申します。

普段はTwitterで電車の音や家電についてのんびり呟いています。こちらのブログは主に語り尽くしたい情報をまとめる場所として運用する方針です。

タイムラインを遡るのは面倒ですし、全部まとめてあった方がすんなり理解が及びますからね。

 

第一回目の記事は、ダイソンのキャニスター掃除機についてです。

 

今年の1月から、ダイソンのキャニスター掃除機を買っては検証を繰り返し行いました。元々幼少期からダイソンの掃除機に興味があったので、この機会に実際に触って確かめてみようと画策し、結果その勢いで大体の機種を網羅してしまいました。

感想を短くまとめると、モデルが実に多種多様で、年次によるデザインの変化と使い勝手が向上していく様子がはっきりと感じ取れました。また、想定はしていましたがやはり問題点があり、クセの強い掃除機だと改めて思いました。

この記事では、各ダイソンキャニスターを実際に触るなどして調査し、そのレポートとダイソンキャニスターの魅力を見出してもらえるような解説をまとめました。多少なりとも掃除機の面白さを感じて頂ければと思います。

一時期はこんなに持っていた事もあります。

 

各機種解説の前に、前置として軽く概要と入手手段について解説します。各機種解説の後はおまけとして国内メーカーからの代替品をまとめました。じっくりとご覧くださいませ。

 

ダイソンの掃除機とは

サイクロン式集塵方式を最大の特徴とする、イギリス発の家電機器メーカー「ダイソン」が手掛けた掃除機です。

サイクロン方式に由来する「変わらない吸引力」を最大の売りとしており、また各部分に施された「ゴミを確実に除去する」工夫によって、他のあらゆる掃除機よりも優れた清掃能力を発揮できるとアピールしています。

実際に、透明なダストケースに大小様々なゴミが溜まっていく様子が見えるのは、非常にインパクトが大きいです。

加えて、こだわりを持ってデザインされたメカチックな外観も、とても斬新かつ魅力的に映ります。インテリアとしてもなかなか秀逸です。

 

サイクロン掃除機の始まりは、ダイソンの創業者であるジェームズ・ダイソン氏が、フィルターの詰まりによる吸引力低下を抑制するため、産業用途で用いられていた粉体分離機を家庭用掃除機向けとして改良し、初めて実用化した事が発端となります。

ダストケース内部に旋回気流を発生させることで、ねじ曲げられた気流はそのまま通過しますが、重さのあるゴミの粒子には遠心力が作用し、外側に飛ばされる事で空気と分離されます。これによりフィルターが詰まる事を防ぎ、変わらない吸引力を実現しました。

 

日本国内においては、2000年代より有名な「吸引力の変わらないただひとつの掃除機」のキャッチフレーズと共に売り込みを仕掛け、その性能のほか、斬新なデザインや常識外れの価格設定が話題を呼んだ事もあってか、数年掛かりで一定の地位を築くことに成功しました。中古品の出回りの多さからも、相当数売り上げた様子が窺えます。

その影響は既存の国内メーカーにも及び、それまで紙パック式一色だったラインナップに、サイクロン式を銘打ったモデルが次々に設定され、現在ではすっかり主流となりました。

ダイソン自身も、掃除機で培った技術と評判を活用し、現在主流のコードレス掃除機の他、扇風機やドライヤーなど、多数の斬新な家電を手がけるメーカーとして定着しています。

 

ダイソンはおすすめか否か

結論を申し上げますと、正直あまりおすすめしません。

これでは題名と矛盾する事になりますが、当然理由が存在します。

 

まず、非常に使いにくい事が挙げられます。

日本国内における展開では、最初に欧米基準のグローバルモデルを投入し、その後それらを日本市場向けに改良するという流れを取ったので、国内メーカー品とは使い勝手が異なり、全体的に使いにくいです。当然ながら、古いモデルであるほど使い勝手は悪くなります。

特にヘッド・パイプが重く、ホースが固いために手元の操作が重いのが最大の欠点です。その他細かい点で癖のある部分が多く、使用頻度が高いほど日々のストレスとなり得ます。

 

また、吸引力が変わらないのが特長ですが、その肝心の吸引力(吸込仕事率)が低いです。

吸引力が低くなる理由ですが、サイクロンの複雑な構造により内部で気流のねじ曲げ・衝突が多発し、エネルギーが失われる事に因ります。このため、同じ電力であれば、ある程度ゴミを溜め込んだ紙パック式掃除機にも吸引力で劣る場面が見られ、効率が悪い上、土足環境のような細かな粉塵が多い環境でない場合、相対的にフィルターが詰まりにくいという利点を発揮しづらくなります。つまり、靴を脱ぐ事が主流の日本国内においては、実質的に優位性がないと言えます。

更に、前述の吸引力の弱さを補いつつ、カーペット内部の粉塵を確実に吸い上げるために、ヘッドの密閉性を高める設計としています。これに起因して、床面に強く貼りつくような独特な操作感を生み出しており、ヘッドを動かすのが重くなる要因となっています。

加えてサイクロンの駆動に強力なパワーが必要となるため、静音性にも全く期待できません。

当然ながら、吸引力が低いために壁きわ等でホコリの吸い込みが悪いと感じる場面も少なくありません。

 

次に、故障が多く整備性も悪いです。

複雑なサイクロンを駆動させる関係上、モーターの負荷が大きくなり、必然的に消費電力、ひいては発熱量の増大に繋がります。加えて、特長的な本体デザインやモーター後部フィルター(ポストモーターフィルター)の装備もあって、排気経路の複雑化や通気性の悪化を招き、本体内に熱が籠りやすくなります。

また、吸込仕事率が低い、すなわち消費電力に対して吸気の量が少なく、モーターの冷却性が悪化する事になります。

モーターからの排気は電子回路や配線の冷却にも使用されるので、温度が上がりやすい事により、高温に曝される事による故障リスクの上昇を認識する必要があります。

 

ただし、電子回路に由来する故障は全体的にはそれほど多くないようで、実際には可動部での断線が非常に多く見られます。

ヘッド、延長パイプ、本体とホースの接続部を複数回動かす事による断線が多く、モーターヘッドが動作しない・手元スイッチが効かないといった症状が発生します。可動部の作りも国内メーカーと比較すると甘く、断線しやすい構造となっている印象です。

加えて、可動部分の配線が不可逆的な組み立てとなっている事が多く、断線した際の修復も困難です(一応新しいモデルほど改善されています)。

登場から10年以上経過しているモデルも多いため、公式での修理対応が難しい場合もあります。

 

最後に、清潔性が低い事が挙げられます。

その大きな要因としては、サイクロンユニットの水洗いが公式に禁止されている事が大きいです。

サイクロンにより遠心分離した粉体ゴミは、ダストカップに落下する構造となっていますが、これらが静電気等により内部に付着し、徐々に堆積していきます。サイクロン部を軽く叩くなどしてある程度落とす事はできますが、堆積したゴミは時間経過と共に湿気を帯びる事で固着し、剥がれにくくなります。加えて雑菌の繁殖により臭いが発生し、酷い場合は掃除機から強烈な臭いを放つ事になります。

こうなるとサイクロンを水洗いする事による対処を考える所ですが、もしそのまま水洗いしてしまった場合、内部構造の複雑さから不十分な汚れ落ちや乾燥となり、雑菌の繁殖により強烈な臭いを放つようになります。却って状況を悪化させる事になるので、絶対にそのまま水洗いする事はおやめください。臭いの発生は本体の故障扱いとなり、サイクロンユニットの新品交換によるパーツ代が掛かります。

正確な対処法は、サイクロン内部の粉塵をハケやブロワーで吹き飛ばす、またはサイクロンを完全に分解した上で洗浄する事です。前者は清潔性が低い作業となり、後者は複雑な分解の手順や各種サイズのトルクスドライバーが必須といった手間があります。

 

この問題が顕著に現れるタイミングが、中古での購入時です。

ダイソンはキャニスター掃除機のラインナップを大幅に縮小しているため、必然的に新品で入手する機会は少なくなっています。加えて価格の都合からも、中古での入手が主となるでしょう。

当然ながら既になにかしらゴミを吸い込んだ個体であるため、サイクロン内部は汚れています。中には酷い状態となっている物も珍しくありません。

つまりダイソンの購入を検討した時点で、内部の汚れへの対処を考慮しなければならない事になります。掃除機の掃除に大変な手間が掛かるという本末転倒な事態です。

国内メーカーのサイクロン掃除機が挙って水洗い可能である事をアピールするのは、ダイソンに対する優位性だからというのが理由の一つです。実際に、多少遠心分離性能が劣った所で、水洗いできた方がメンテナンスの際に粉塵を吸い込みにくく、臭いの防止にも繋がるのでより実用的です。

 

以上の主な3点から、ダイソンの掃除機は使いにくい・壊れやすい・清潔性が低いという事を大まかに示しました。

使い手に何事も気にしない大らかさを求める反面、故障なく使い続けるには繊細な使用が求められるので、とにかく手間の掛かる製品です。

手間が掛からず、普通の掃除機としての使い勝手を求める人は、国内メーカーの製品を選んだ方が良いです。当記事においても、「ダイソンキャニスターの代替品」と称して後述します。

 

上記の問題点を呑み込んだ上で、ダイソンのデザインや特徴的な使い勝手、吸い込んだゴミがよく見える様子が掃除のモチベーションを高めてくれると捉えられる人には、是非ともおすすめします。

また、先述したポストモーターフィルターの装備によって熱が籠りやすいという点も、裏を返せば全てのモデルがフィルターを装着しているので、排気の綺麗さが保証されているという事でもあります。この点は国内メーカーよりも分かりやすく優秀です。(国内メーカー品はポストモーターフィルター装備機種が少ない上に、装着の有無も分かりにくいです。)

 

モーターヘッドとタービンヘッド

ダイソン公式の位置付けとしては、モーターヘッドはカーペット向け、タービンヘッドはフローリング向けとされています。価格差もそれほどありませんが、一応モーターヘッドの方が上位となっており、少し高いです。

 

両者共に優れている点はありますが、基本的にモーターヘッド推奨です

理由として、タービンヘッドはヘッドの側面から吸気を行いエアタービンを駆動する関係上、ヘッド直下の吸引力が低下する事が挙げられます。加えて、フローリング上では十分ですが、ブラシの回転力が弱いので、カーペット上では回転が止まってしまう事が多いです。

モーターヘッドであれば、吸引力がヘッド直下に集中するので、厚手のカーペット上でも高い清掃力を発揮できるほか、手元のスイッチで容易にブラシの回転を停止する事が可能です。総じて、モーターヘッドの方が汎用性が高く扱いやすいと言えます。

 

タービンヘッドの特長は、モーターを搭載しないので非常に軽く、側面に吸気口が設けられる事から床への吸い付きも弱まるので、ヘッドが軽く動かし易い事が挙げられます。

また、電子部品や配線が無いので、分解すれば容易に水洗いでリフレッシュ可能な事も利点と言えるでしょう。

床面や畳の傷付きが気になる時は、大抵の場合、ヘッド側面のスイッチを操作する事でブラシの回転を停止できます。この際は側面の吸気口が塞がれるため、吸引力がヘッド直下に集中しますが、ヘッドの浮き上がり等で内部の真空度が低下すると、スイッチが元に戻りブラシが再び回転するようになります。このため、操作に慣れが必要なほか、弛み等への引っ掛かりでヘッドが浮き上がりやすいカーペットの清掃にはあまり向きません。

総じて、モーターヘッドより物理的負担が少ないですが、割とクセの強いヘッドです。

 

モーターヘッドの派生・その他ヘッド

CY24・CY25・CY29の3モデルには、モーターヘッドの上位としてソフトローラークリーナーヘッド・ダイレクトドライブモーターヘッドの設定があります。

ソフトローラークリーナーヘッドは、大型のフェルトローラーを採用し、前面を大きく開けているのが特徴です。これにより従来型と同等の気密性を保ちつつ、猫砂などの大きなゴミの吸引に対応しました。カーペットの奥の細かい粉ゴミも従来通り吸引できるので、汎用性の高いヘッドに仕上がっていると言えます。またこのヘッドが付属する場合、「Fluffy」のエディション名が付きます。

ダイレクトドライブクリーナーヘッドは、従来のモーターヘッドを改良してソフトローラークリーナーヘッドの要素を取り入れたものとなります。ソフトローラーヘッドと同様ですが、ブラシバーを太くして駆動モーターを内部に収めており、重心をブラシバーに持ってくる事でカーペットにしっかりブラシを押し付けるようにしています。またソフトローラーには無い固いナイロンブラシが付いているので、「Animal」のエディション名にもある通り、カーペットに潜り込んだペットの毛などを強力にかき出す事に優れたヘッドです。

ただし、両者共に従来のモーターヘッドから大型化しているので、ヘッドが非常に重く持ち上げにくいのが難点となります。

 

また、DC26やDC12、それ以前のモデルには、回転ブラシを持たないノーマルヘッド(フラットアウトツールなど)の設定があります。

 

中古での入手方法

ダイソンの新品価格は非常に高いので、大幅に安く入手できる可能性の高い中古は視野に入れておくべきです。

主な入手経路はリサイクルショップなどの実店舗、またはインターネット上のフリマサイトやヤフオクでの落札になります。

 

実店舗での入手は動作保証率が高く、実物を目で見て確認できるのが良いところです。一方でブランドイメージから高値が付きやすいので、少々割高に感じる事が多いでしょう。このため、絶対的な安定を取る場合の選択肢と捉えるのが良いです。

各フリマサイトでも他メーカーより高値が付く傾向は同じですが、汚れ・キズの多さなどでジャンク扱いとしている出品もあり、動作品が安く入手できる機会があります。手間が掛かるのを覚悟するならおすすめできる選択肢です。

ヤフオクでは入手性こそ安定しなくなりますが、開始価格1円である事も多いので、更に安い価格での入手を狙えます。実際に僕自身はヤフオクでの入手が主となりました。

 

当然ですが中古商品であるため、出品者が自主的に整備している場合を除いて、基本的に清掃整備は必要です。

概ねT8・T10・T15サイズのトルクスドライバーを用意すれば支障なく分解できます。

 

主な機種の解説

V4 Digital(CY29) 検証済

仕様\モデル CY29
吸込仕事率 160W※
定格消費電力 1200W
本体重量 3.04kg
含ヘッド等 6.42kg

※吸込仕事率1200W表記の物が紛れています。何故…

収納スタンドに立てかけた様子。

 

2018年発売の最新型ダイソンキャニスター。

DC63をベースに、各部分の改善を図ったモデルです。DC63より一回り重くなっていますが、掃除機としての使い勝手は歴代で最も良いと言えます。

見た目は大分異なりますが、基本性能はDC63とほぼ変わりません。

 

最大の特徴として、本体は「セルフライディング機構」と呼ばれる設計により低重心化され、倒れても起き上がり小法師の如く勝手に起き上がるようになっています。

また、ホース接続部が可動しないため断線しにくくなる事が期待できます。

排気風路もDC63より短くなり、少しだけ熱が籠りにくくなったのは良いところです。

 

使い勝手に優れる理由としては、ホースが一般的な柔らかいシリコンホースに変更された点が大きいです。これによりホースが暴れにくくなり、手元ツールでの作業性が大幅に向上しました。

また、着脱スイッチの改良によってツールの付け外しも従来より容易になっています。 

 

反面、着脱機構の変更で従来機種とのツールの互換性が失われています。加えて、同じスムーズフィット機構を備えるコードレスシリーズ用のツールも、パイプ径が若干異なる為に取り付けが不可能であるため、実質的に本機種の専用規格となっています。

ダイソンのツールは大量に出回っており、中古で安価に入手可能なだけに、非常に残念に思います。

また、サイクロンユニットの分解整備性が非常に悪く、ヘッドも大径ローラーの重いタイプしかないのは個人的にいただけないポイント。他にも本体単独での収納に対応しないなど、やはり使いにくい点は存在します。

 

しかし、ホースが柔らかくなった事はやはり大きく、掃除機として純粋に使いやすくなった事は大いに評価できるでしょう。

特に布団掃除では、コード付きのパワーを活かして大活躍間違いなしです。

 

新品で手に入るなら最もおすすめできる機種ですが、残念ながら2022年初頭に販売終了となったようで、市場在庫もほぼ残っていません。

最新モデルだけあって中古でも高く、付属品欠品やサイクロンユニットの汚れもあるため少々勧めづらい状況となっています。

 

DC48・DC63 DC48のみ検証済

仕様\モデル DC48 DC63
吸込仕事率 170W 160W
定格消費電力 1150W
本体重量 2.8kg
含ヘッド等 4.75~4.95kg 4.84~5.16kg

右側がDC48。左側はDC26後期型。

 

DC26の後継となる小型ダイソンとして、2013年に初登場。

このうちDC63は、サイクロンユニットを2段仕様にアップデートしたモデルで、2014年に登場。この流れはDC36→DC46と同じです。

サイクロンの気筒数はDC48が12個、DC63が倍となる24個です。この違いについては後述のDC36・DC46の項をご覧ください。

 

DC63の方は販売過程で形式がDC63→CY24→CY25と推移しており、公式での名称も形式の付かない「Dyson Ball ○○○(moterheadなどが入る)」に変更されていますが、カラーリングを除く本体仕様は何れも全く同じです。

主な違いはヘッドのバリエーションで、従来のモーターヘッド/タービンヘッドの他、フラフィと通称されるソフトローラークリーナーヘッド(CY24FFなど)、アニマルと称されるダイレクトドライブクリーナーヘッドが付属するエディション(CY25AN・CY25AF)が存在します。特に後者2種類のヘッドはかなり重く、このために総重量の幅が大きくなっています。

 

以下は共通の特徴です。

本体が質量にしてDC46の4kgから、2.8kgへと大幅に小型軽量化されました。一方で軽量化しつつも機能性は損なわず、ボール形状、吸引性能や集塵容量は極力維持しています。

また、ヘッドが薄型軽量化された新型となっていますが、それ以外のパーツは従来とほぼ同じです。

先代ダイソンボールとパイプの形状は同じで互換性はあるものの、DC48用は本体引っ掛け用の出っ張りが追加されているため、従来型では収納に対応しません。

また、DC26・DC36・DC46も同様ですが、モーターヘッド用のパイプ・ホースにタービンヘッドやタービンヘッド用のパイプ・ホースをそのまま装着することは不可能です。ただし、コネクタと干渉する部分を分解して、切り欠きを設ける事で取り付けに対応できます。

 

本体は小型軽量化が図られましたが、本体の収納はパイプを斜めに固定するスタイルとなったために占有面積が増えており、収納性は逆に低下しています。この点だけは年々退化する傾向にあるのがなんとも言えないところ。

また、吸気口配置の都合で、円筒型プレフィルターが外側吸気から内側吸気に変更された為、汚れの確認や水洗いがやりづらくなったのは少し残念です。

 

最大の特徴は、独自開発の「ダイソンデジタルモーターV4」を搭載しているところ。

いわゆるブラシレスモーターで、小型化する代わりに回転数を従来の3倍程度まで高めることで風量を維持しています。加えて、摩耗部品であるカーボンブラシが存在しないので、有害なカーボンカスを排出せず、ブラシ交換が不要でモーターを長寿命化できるという利点もあります。ポストモーターフィルターが真っ黒に汚れる心配もありません。

また、高回転化の副産物として振動が少なくなり、加えて小型化で捻出したスペースを排気風路の延長に充てる事で、反響による騒音減衰を図っています。よって騒音は従来機種より若干静かになっていますが、高回転故の高音が少々耳障りに感じるかもしれません。

 

一方で問題点もあり、消費電力に対して吸い込み風量が不足している為か、排気がとにかく爆熱です。実際、体感上はDC36・DC46よりも明らかに吸い込み風量が減っています。

また、カーボンブラシ摩耗による寿命は無いものの、モーター制御の電子回路は修復困難で、加えて先述した高熱や高回転による回路や軸受へのダメージが想定される為、実使用における寿命については未知数な部分が大きいです。壊れにくい可能性はあるものの、自己修復はほぼ不可能であるため、万が一故障した際の金銭的ダメージは大きいです。

よって、デジタルモーター自体のメリットは微妙なところでしょう。

 

DC48とDC63の違いは、先述したサイクロンの数のほか、カラーリングが主な違いになります。DC48は単色でシンプルに、DC63はツートンや銀メッキによって豪華な仕上げとなっている印象です。

実用上両者に違いはないので、デザインや組み合わされるヘッドで選ぶのが良いでしょう。

個人的にはサイクロン気筒が少ない分、構造がシンプルで粉塵が溜まりにくいDC48の方が好み。

 

後述するDC36・DC46とは使い勝手がよく似ているため、比較して気に入ったものを選ぶ事になるでしょう。本体の軽さや静音性、カラーバリエーションはこちらに分がありますが、パワーや本体の整備性、収納性はあちらが優位です。

ちなみに、DC48・DC63双方で本体仕様は同じであるものの、サイクロン形状に合わせた本体の凹みが異なるので、ダストカップを相互に付け替えることは不可能です。

 

DC36・DC46 両方検証済

仕様\モデル DC36 DC46
吸込仕事率 170W 180W
定格消費電力 1100W
本体重量 4kg 4.13kg
含ヘッド等 6.26~6.59kg 6.23~6.55kg

 

DC36は2011年、DC46は2012年にその改良型として登場したモデル。

カーボンファイバーDC26の機能を基に、新しいデザインを取り入れた機種です。製品ラインナップ上は一応DC22の後継になります。

その特徴的な本体デザインから、「Dyson Ball」のブランド名が新たに設定されました。

 

大きな要素は、なんといっても本体がボールデザインとなっている点です。非常に目を引く外観ですが、機能的にも操作性、特に旋回性に優れています。

ボール側面の大型車輪のほか、サブ車輪を設けて直進性や倒れにくさも従来同様に確保し、加えてホースとの連結部分を正面に出した上で左右可動としています。その結果、本体の取り回しは従来機種から大幅に改善されました。

また、本体内部も配線や風路設計を抜本的に変えており、分解整備性は大幅に改善され、排気の熱も籠りにくくなりました。

 

サイクロンユニットも改良がなされ、サイクロン気筒を放射状に配置して、中央の開いたスペースに円筒型のプレフィルターを取り付ける構造となりました。これにより各気筒の気流バランスを改善し、公称4年間のフィルター清掃不要(DC46は3年間)を実現しています。

吸気経路を兼ねた本体ハンドルが円筒型フィルターに直接接続され、スマートな外観を実現しています。

 

ヘッドやホースはDC26後期型を踏襲しているので、手元の重量感は特に変わりません。ただし、本体の取り回しが格段に良くなっているので、全体的な使い勝手はこちらの方が優れていると言えるでしょう。

また、歴代でもかなり本体やサイクロンユニットの分解整備性に優れており、逆に最も悪いレベルだったDC26と比べると桁違いの改善が見られます。このため、手間をかけて長く使いたいという方には是非ともおすすめしたい機種です。

 

DC36とDC46の主な違いはサイクロンで、前者は12気筒の1段仕様(ラジアルルートサイクロン)、後者は2倍以上に増えた32気筒の2段仕様(2-Tierラジアルサイクロン、32ルートサイクロンとも)となっています。

DC46の2段仕様は、サイクロンの数を増やす一方、気筒自体を小さくすることで風速を高めて遠心力を強化し、さらなる遠心分離性能の強化を図ったものです。一方で、内部構造の複雑化で粉塵が残留しやすいという欠点もあります。ましてや公称のフィルター清掃不要期間はむしろ短くなっているので、おそらく実用上の違いはありません。

加えて、パワーロスが減ったためか吸込仕事率が僅かに上がっているものの、こちらも体感できるほどの違いは感じられないものです。

よって、こちらもデザインが気に入った方を選ぶのが良いと思います。個人的には、やはりサイクロンが1段仕様で分解清掃が容易なDC36がお気に入りです。

 

また、両者で本体の仕様は概ね同じですが、サイクロンの取り付け部が多少異なるのでダストボックスを相互に付け替えることは不可能です。この点もDC48・DC63と同様ですね。

一方でヘッドやホース、フィルター類は両者で完全同一なので相互に付け替えが可能です。加えてDC26のヘッドとも互換性はあるものの、DC26用とは本体への差し込み部形状が異なるので、収納には対応しません。

 

総じて、歴代でもかなりおすすめできるダイソンキャニスターと言えるでしょう。

 

DC26 前期型・後期型共に検証済

仕様\モデル DC26
吸込仕事率 170W
定格消費電力 1100W
本体重量 3.2kg
含ヘッド等 5.6~6.26kg

初期型のmoterhead complete。

 

2009年に発売した、日本向けに小型軽量化を図ったダイソン初の小型機。当時「最も小さなダイソン」を謳ったモデルです。

その後2010年に改良型として、カラーリングとヘッド・パイプ・ホースの刷新が行われています。この際に初登場したカーボンファイバーブラシの特徴を表すため、改良された後期型は「DC26 CF」の形式となっています。

 

DC22をそのまま小さくしたような外観で、その分スペックは低下しました。

サイクロン部はコアセパレーターの無い通常のルートサイクロンで、公称のフィルター清掃までのスパンは2年間。吸込仕事率も200Wを割り、170Wまで低下しています。

また、メインモーターはデジタルモーターではなく、新たにパナソニック製の整流子モーターが採用され、従来の整流子モーターでは不可能だった強弱切替が可能になりました。これにより騒音は並程度に収まったものの、カーボンダストの排出が凄まじく、ポストモーターフィルターが真っ黒になるのが残念なところです。

加えてDC22同様、風路が狭く曲がりも多いためか熱が籠りやすく、排気が大変に爆熱。

 

そして、小型化の弊害か分解整備が非常に面倒となっています。間違いなく歴代で最も整備性の悪い機種です。

サイクロンユニットの分解は嵌め込まれたハンドルを慎重に外さなければならず、傷を付けずに分解するのが困難です。本体も分解の手順がかなり多く、カーボンブラシの交換は容易ではありません。

古いモデルながら個体数が多く、比較的安価に手に入るため、整備性の低さは割り切った上で使い捨て感覚で使うと良いかもしれません。お試し目的なら割とおすすめできます。

 

日本市場に合わせた改良として、ヘッド・ホース・パイプが新設計されています。ヘッドは小回りが効くよう小型化されたほか、手元スイッチが従来の無線リモコン式から一般的なケーブル式に変更され、リモコン用の電池が不要になりました。

モーターヘッドでもホースと延長パイプの分割が可能になり、手元ツール使用時でも手元にハンドルとスイッチが来るようになったので、使い勝手が大きく向上しています。(使い勝手が良くなったと何回も言ってますが、それだけ上がり幅が大きいのです)

2010年の改良型では、先述したカーボンファイバーブラシの他、持ち手形状の変更、ホース回転部と手元ハンドルの一体化といった、使いやすさを高める改良が行われています。また、カーボンファイバーブラシの追加に伴って、従来の硬いナイロンブラシが若干短くなり、フローリングや畳に直接触れないようになったため、床の傷付きを心配する必要が無くなりました。

 

また、当機種はサイクロンユニットの設計が良くないのか、フィルターがすぐに詰まってしまう傾向があるようです。中古品においてもフィルターが詰まった状態の個体が多いと見られます。

初期型が特に詰まりやすく、後期型で改良され改善したという説もありますが、判別できる差異は特に見られず、真偽は今のところ不明です。

 

ちなみに総質量に幅があるのは、初期型の「motorhead complete」エディションのみアルミ製のテレスコープパイプを使用しており、400g程度重くなっているためです。

重いことに加え、長さの調整ができないのは難点ではありますが、このモデルに限り本体にホースを巻き付けてコンパクトに収納する事が可能で、その結果歴代で最も収納がコンパクトなダイソンキャニスターという個性を持っています。

 

余談ですが、初期型のDC26 moterhead completeは現在も保有しており、主にカーペットのリフレッシュ用として活躍しています。

硬いナイロンブラシを備えるモーターヘッド

洗ったばかりのカーペットも、サッとかければホコリがどっさり。

 

DC22 ddmモーターヘッドddmタービンヘッド検証済

仕様\モデル ddm moterhead ddm turbinhead moterhead turbinhead
吸込仕事率 210W 200W
定格消費電力 1100W
本体重量 4.8kg 4.9kg
含ヘッド等 8.3kg 7.3kg 8.4kg 7.4kg

左がタービンヘッド、右がモーターヘッドモーターヘッドの方がホースが長い。

 

2007年発売のモデルで、凄まじいスペックを誇る大型機。…に見えますが、実際はどちらかと言えば小型機に当たるそうです。

相当古いモデルであり、後述しますが使い勝手も極めて悪いのでおすすめはできません。

 

クリアビン→コアセパレーター→ルートサイクロン(14個)による、三段階の遠心分離機構を搭載するのが最大の特徴です。

コアセパレーターはルートサイクロン前段に位置する大きめのサイクロンで、粉塵よりも大きい細かな綿ぼこり等の分離を担当しています。

この三段階のサイクロンシステムによってフィルターへの塵埃の侵入を徹底的に防ぎ、加えて円筒形状の超大型プレモーターフィルターを装備する事で、少々の詰まりがあっても流量の低下を最小限に抑えています。その結果、公称で7年間フィルター清掃不要とされており、事実上のメンテナンスフリーを謳っています。

ただし、現実にはそこまで都合良くは行かず、当然ながらゴミが溜まったまま使い続けるとホコリが侵入するので、後々を考えてこまめにゴミを捨てましょう。

右がDC22のプレフィルター。左はDC26のもの。

 

本体バリエーションはデジタルモーター仕様と整流子モーター仕様の2種類が存在します。概ね以下の相違点があり、

  • 本体の電源ボタンがddmは透明、整流子モーターは赤色
  • 組み合わされるサイクロンユニットのカラーがddmはイエロー系のみ、整流子モーターはブルー・マゼンタ・パープル・グレーの4種類
  • ddmは強弱切替が可能
  • ddmは長寿命とされており、保証期間が5年(整流子モーターは2年)

後述のDC12と同様に、デジタルモーターが上位機種の扱いです。ただし、DC48等とは異なり、性能と引き換えに凄まじい爆音を放つので、実質的には一長一短と言えます。

デジタルモーターの弱モードは音がマイルドな「ウィスパーモード」と呼称されていますが、どう考えてもささやき声ではなくサイレン音です。昼間であっても近所迷惑になるレベルの騒音なので、重々承知の上でご検討ください。

 

また、当機種よりモーターヘッド仕様が本格的に登場し(過去にはDC05で設定がありました)、タービンヘッドとの選択になりました。メインモーターの違いも含めて合計4エディションでの展開となります。

 

歴代で最も使い勝手が悪いと言える機種でもあり、先述した爆音の他にも、本体の重さとホースの引き出し位置が中心からずれている事から、取り回しも非常に悪いです。

パイプは三段伸縮式となっていますが、長さの調整はできません。加えてパイプを短くした状態だと風路が狭まってしまうので、実質的に伸ばした状態でしか常用できません。

ダストカップの直径が大きいので、ゴミ箱に捨てる際も一苦労です。

極め付けとして、モーターヘッドモデルはパイプ・ホースに配線が通っていますが、このためにパイプとホースを分割する事が不可能となっており、手元部分に装着するアタッチメントが実質的に使用不可能です。沢山のツールを付属しておきながらまともに使う事ができず、とりわけ布団掃除の際に手元で取り回せないのは非常に困る部分です。

またモーターヘッドはパイプを伸ばすと、パイプ内にホースを引き込む構造となっているので、その分ホースが長くなり取り回しが更に悪化する要因となっています。

加えてモーターヘッド自体も、絨毯のたるみを軽く巻き込んだだけでエラーで停止する事が多く、ヘッドの重さと可動性の悪さも相まって非常に使いにくいです。

上記の理由からモーターヘッドの使いにくさが目立つので、当機種に限ってはタービンヘッドを推奨します

 

余談ですが、パイプを縮めると風路が狭まってしまう問題は、DC26 motorhead completeでは解消されています。

 

本体の整備性はDC26よりはマシですが、あまり良くありません。排気の風路も複雑で熱が籠りやすく、長く使うには向かないものと思われます。

 

よって、普通の人にはおすすめできませんが、一方で圧倒的なスペックと迫力ある見た目に魅せられた、ロマンを追い求める人には合うかもしれません。

折角ダイソンを買うのですから、それが特別なものであって欲しいと考えるのも良いと思います。掃除のモチベーションに繋がるのなら尚更です。

 

なお、モーターヘッドについてはホースのリコールが掛かっており、現在でも受付中です。未対策品は本体への差し込み部分がグレー、対策品は白となっていますので、まだ交換されていない方は是非ともダイソンまでご連絡下さい。

 

DC12/DC12 plus 未検証

仕様\モデル DC12
本体重量 約4kg
含ヘッド等 約6kg

※大変複雑なので他のスペックは後述

 

ダイソンの名が広く知れ渡るきっかけとなったモデル。無印が2004年、改良型のplusが2006年発売。

有名な「吸引力の変わらないただ一つの掃除機」のフレーズもこの頃から使われています

特に、本体バリエーションに富んでいるのが特徴です。DC22同様にかなり古いモデルなので、あまりおすすめはできません。

 

DC08の機能を基に、小型軽量化や使い勝手の改善を図ったものです。

ルートサイクロンの気筒数は5個で、これは歴代最少。プレモーターフィルターも普通のサイズ感で、本体重量も4kgとDC22の4.9kgより一回り軽いです。

とはいえ、実用性能はおそらく差がないので、ロマンを取るならDC22、取り回しの良さや整備性を取るならDC12という選択で良いでしょう。価格帯もDC22とほぼ同じです。

 

ただし、当時は製作技術が成熟していなかった為か、基板故障やコードの過熱といった不具合が多いとされる機種でもあるため、中古購入の際は相応のリスクを覚悟しておきましょう。

また、DC08とは異なり、全機種でホースを本体に巻きつけるコンパクトな収納に対応するため、全エディションで三段伸縮パイプ(テレスコープパイプ)を装備しており、よってパイプの長さ調整は不可能です。

 

軽量化と高性能を両立すべく、ダイソンデジタルモーターを初めて採用しました。

所謂ブラシレスモーターで、カーボンブラシの磨耗がないため一般的な整流子モーターよりも高出力、その上長寿命というメリットがあります。とりわけサイクロンに大きなパワーを割くダイソンの掃除機にはうってつけのモーターと言えるでしょう。

反面、運転中はサイレンの如き凄まじい唸り音を発し、とにかく爆音なのがデメリット。「ダイソンはうるさい」という評判が付いた要因でもあります。

DC22の項で説明しましたが、当機種にもウィスパーモード(うるさい弱モード)があります。

 

一方で廉価グレードに当たるエディションには、従来通りの整流子モーターが搭載されます。こちらは唸り音はマシになっていますが、手元スイッチが無く不便であるのが残念な部分です。加えて、こちらは強弱切り替えが不可能になります。

 

先述の通り本体バリエーションが豊富なのが特徴で、各エディション毎にカラーリングの他、ヘッドや付属品の違い、更にモーターやその出力といった差があります。調査の上で下表にまとめたので是非ともご覧下さい。

改良型のplusシリーズでは、カラーリングの刷新、外装材や排気風路の改良がなされています。

 

主な仕様の比較

仕様\エディション entry turbo (無印) allergy animalpro complete
吸込仕事率 200W 250W※
定格消費電力 1000W 1200W
モーター 整流子 ddm
カラーリング 赤/グレー 赤/グレーor白/グレー 黄色 黄/グレー 薄紫 紫/白
手元スイッチ × ×
フトンツール × × ×
その他付属品 - - - - ソファツール マイクロタービンヘッド・フレキシブル隙間ノズル

※まれに吸込仕事率300W表記が存在

 

plusシリーズ

仕様\エディション plus entry plus allergy plus animalpro plus complete plus turbinehead
吸込仕事率 225W※
定格消費電力 1100W
カラーリング 橙/グレー 青/グレー 紫/グレー ゴールド/グレー シルバー/グレー
フトンツール ×
マイクロタービンヘッド × × ×
その他付属品 - - - ソフトブラシツール・フレキシブル隙間ノズル フレキシブル隙間ノズル

※まれに吸込仕事率250W表記が存在

 

全機種共通でブラシノズル・ミニT字型ノズル・隙間ノズルが付属します。また、ヘッドは初期型のentryエディションのみ回転ブラシの無いノーマルヘッド、その他は全てタービンヘッドになります。

 

DC08 未検証

仕様\モデル DC08 DC08T
吸込仕事率 240W
定格消費電力 1000W
本体重量 6.1kg 6.3kg
含ヘッド等 8.2kg 8.7kg

 

キャニスター型DC05の後継で、アップライト型のDC07と共にルートサイクロンを初採用したグローバルモデル。日本においては2003年頃から展開したようです。

 

欧米基準のモデルだけあって、とにかく大きく重く、ダストカップの容量は日本仕様の約4倍(2リットル)あります。加えて、吸引力もかなり強いです。

フィルターの代替品が通販で出回っており、その気になれば現在でも整備して使う事が可能です。

 

本体カラーなどバリエーションが豊富で、把握が困難ですが、大まかに通常の伸縮パイプを搭載する前期型、テレスコープパイプを装備しており、本体にホースを巻きつけてコンパクトに収納できる後期型に分類できます。

後者は特に「DC08T」のモデル名(テレスコープのT)となっています。

 

DC02・DC05

1990年代の登場で、DC08よりも更に古いモデルです。DC02はダイソン初のキャニスター型掃除機で、DC05はその後継に当たります。

グローバルモデルで、日本でも普通に販売されていましたが、時期が時期だけに流通量は極端に少ないです。

情報があまりにも少ないので、問題が発生した時の為にも通常使用は全くおすすめできません。あくまでもコレクターズアイテムと捉えるのが良いでしょう。

 

お馴染みのルートサイクロンが開発される前なので、ルートサイクロンが1気筒だけになったものと言える「デュアルサイクロンテクノロジー」を搭載します。

遠心分離を2回行うことで、家庭内で発生する大きな埃から、細かい砂粒までの幅広いゴミの分離に対応しています。この思想は現在も変わっておらず、形式名の「DC(Dual Cycloneの略)」の由来ともなっています。

 

その他の特徴としては、英国製造である事が挙げられるでしょうか(以降のモデルは全てマレーシア製造)。

 

例外的な機種の解説

こちらでは、本来海外仕様であったもの、一般の家電量販店向けには出回っていないモデルを主に解説します。

DC19T2・DC20

仕様\モデル DC19T2 DC20
吸込仕事率 220W 240W
定格消費電力 1000W
本体重量 5.61kg 5.9kg
含ヘッド等 7.77kg 8.9kg

 

欧米向けモデルを日本に持ち込んだものです。正式な展開時期は不明ですが、2008〜2010年頃と思われます。

外観からしてDC08がベースとなっているようです。

 

本体の形状は両者でほぼ同じであり、仕様もあまり変わらない事から、基本的に同一と捉えて良いでしょう。

特にDC20は、業務用の位置付けとされていたようです。本体に各アタッチメントを取り付けてそのまま持ち運びできる点が特徴です。

 

DC37・DC39 検証済

仕様\モデル DC37
吸込仕事率 220W
定格消費電力 1100W
本体重量 約5.5kg
含ヘッド等 7.62kg

左側がDC37。DC36と比べると大きいですね。

 

DC37も欧米向けモデルを日本に持ち込んだもので、DC36の海外版に当たります。日本国内ではコストコ向けに流通していたらしく、新品2万円台で購入できることもあったとの事…

日本への流通に当たって、プラグの形状が変更されていますが、本体や装備品はほとんど変わっていない模様です。

流通量もそれなりにあるようで、ヤフオク等を張っていればたまに出てくる印象です。

 

なお見た目が同じ別形式のDC39が存在します。

こちらはDC37のプラグ形状が異なるもので、DC37とは異なる販売国に合わせたモデルであると思われます。日本国内では並行輸入品として出回っており、どうやら普通に使えるようです…

 

こちらもやはり本体が大きく重く、相応にパワーアップしています。特に吸引力は、体感でもDC22より明らかに強いです。

また、ボールデザインに加えてホースがかなり柔らかく、意外にも取り回しはそこまで悪くなっていません。

音は相応に大きくなっていますが、DC22ほど耳障りでもありません。

ヘッドはタービンヘッドになりますが、回転が非常に強力で、吸引力の強さと相まって能力不足を感じる事はほぼ無いでしょう。床面への貼り付き対策として、ハンドルに付いているトリガーを引く事で気圧を調整する機構が備えられています。ただし、ブラシの回転を完全停止させる機構はありません。

手元の気圧調整用トリガー。加えてハンドルの上面にボタンがありますが、こちらはブラシが止まる程にヘッドの吸い込みが低下します。

 

大型化しただけあって、本体やサイクロンユニットの分解整備性はトップクラスです。

本体は上下に分割されており、上部にスイッチとコードリールを収めているので、下半分に収められたモーターへのアクセスが容易です。また、ポストモーターフィルターが非常に大きく、熱も籠りにくくなっています。

交換部品も通販で充実しており、末長い付き合いが期待できるでしょう。DC22の立つ瀬がありません。

ただし、ポストモーターフィルターの交換には上半分の外装とコードリールを分割する必要がありますが、ツメが非常に固いので外すのが難しく、再度取り付けるのも容易ではありません。ここだけが整備性において唯一の残念ポイントとなります。

 

総じて、デカくて重い海外モデルでありながら、意外とおすすめできます。

手元に電源スイッチが無いことを許容できるなら、十分に選択肢となり得るでしょう。逆に言えば、手元スイッチが無いことが最大のストレス要因でもあるのですが…

 

Dyson Cinetic Big Ballシリーズ(CY22・CY18等)

偶然にもCY18を入手してしまったので解説します。

 

日本では全く展開されていないシリーズです。

前述のDC37やDC47(DC46の海外バージョン)の後継に当たります。大まかに先代のボールデザインを引き継いだ旧型(DC52・DC78・CY18等)と、V4 Digital(CY29)と同様の起き上がり小法師デザインを採用した新型(CY22・CY23等)に分類できます。

 

最大の特徴は、新機構「Cinetic Tips」の搭載です。ダイソンでは最新、かつ最高峰のサイクロンシステムになります。

基本はルートサイクロンと同様に、多数の小さな気筒による2次サイクロンで細かなゴミを分離していますが、大きな違いとしてサイクロン気筒の底部分(遠心分離した粉塵が排出される穴の周辺)に柔らかいゴムチップが取り付けられています。

 これによって気筒が延長される事になり、サイクロンの最小径がより小さくなっています。径が小さくなる事で気流の旋回速度がより高くなり、従来よりも細かな粉体ゴミの分離が可能になったとの事です。

一方で、径が小さくなった事で遠心分離したゴミが排出口付近で詰まってしまう可能性がありましたが、柔らかいゴムチップが気流によって高速で振動する事で、底に溜まったゴミの排出を促進し、この問題を解消しています。

 

DC47までのルートサイクロンで分離できる最小粒子径は1μmが限界でしたが、ゴムチップを装備するサイクロンでは、最小0.5μmまで向上しました。

その結果、プレフィルターが無くとも十分な分離性能を実現できる事から、何とプレフィルターが完全に廃止され、よって定期的なフィルター清掃が完全不要となりました。完全メンテナンスフリーを実現したため、ここに究極のサイクロン掃除機が完成したことになります。

従来円筒形プレフィルターを収めていたスペースは、サイクロン気筒の増設に充てられています。また、細かい埃や髪の毛の侵入を防ぐため、少し大きめのサイクロン気筒をクリアビンの次段に備えており、DC22・DC23(DC22をベースとした大型機)以来となる三段階遠心分離構成となりました。

DC52・DC78・CY18においては、1段目18気筒・2段目36気筒で合計54気筒となっており、DC46・DC47の32気筒を大きく上回り歴代最多となっています。

 

なお、ポストモーターフィルターは従来通り装備するので、サイクロンで分離できなかった粒子が外に漏れ出す心配はありません。

 

サイクロン機構の違いを除くと、概ねDC37と同じ機能となっているので、使用感は特に変わりません。

強いて違いを挙げるなら、ヘッドのブラシがカーボンファイバーとなっている事でしょうか。

また、サイクロン機構の刷新でパーツ構成が複雑化したので、分解整備性はむしろ悪化してしまいました。

 

Cineticシリーズは日本での展開がないため、プラグ形状が異なっておりそのままでは使用できません。ただし、どのモデルも直巻整流子モーターを装備しているため、コードリールの換装やコードそのものの付け替えを行えば、国内の交流100Vにおいても動作が可能です。

当然ながら、公式からの動作保証は無い上に、温度ヒューズ等の安全装備も特にありませんので、万が一の事故を防ぐ為にも日本国内での通常使用はやめておきましょう。動作させたい時は、必ず事故への対処が可能な環境で行ってください。

 

ダイソンキャニスターの代替品

最初に述べましたが、ダイソンの掃除機は基本的にはおすすめしづらい製品です。

扱いやすさ・実用性の面では国内メーカーに分があり、価格や整備性も優れています。機能面で互換性のあるサイクロン掃除機を始めとして、あらゆる代替選択肢が存在するので、ここで紹介します。

 

フィルターレスサイクロン(本格サイクロン)

サイクロン掃除機の中には、吸引力が落ちないフィルターレスサイクロンを謳うものが存在します。

これはフィルターが全く存在しないという意味ではなく、粉体ゴミの分離をフィルターに頼らない構造となっていることを表します。

そもそも遠心分離を行うことでフィルターが詰まらないからこそサイクロン式と呼べるのですが、一説にはダイソンが特許を固めていた為に優れたサイクロン機構が使用できず、かといってマーケティングサイクロン式の表現を使わない訳にもいかなかった為に、まともに遠心分離ができないサイクロン掃除機が蔓延したという背景があるとされています。

これらは初期の国産サイクロン掃除機に対して明確な優位性を持つモデルとして、2010年以降に徐々に展開されるようになりました。

 

多くの機種において、ダイソンのルートサイクロンを模倣したものとなっています。大きな違いは、どのモデルもサイクロンユニットをパーツ単位で分解できるようになっており、公式に水洗いによるリフレッシュに対応することです。

ダストケースにはフィルターを装着していませんが、多くの場合本体側にプレモーターフィルターが取り付けられており、概ね半年〜1年に一度の水洗いが推奨されています。

なお、フィルターレスという表現には、実態との差異に少なからずツッコミがあったようで、後に家電量販店を中心に「本格サイクロン」の表現が使われるようになりました。

 

サイクロンユニットを水洗いできるので、本家ダイソンよりも内部を清潔に保つことが可能で、臭いの対策になるのが利点です。

一方で、ダイソン同様に吸込仕事率が低いのが欠点で、殆どの機種で最大200Wとなります。また、三菱電機以外の製品はポストモーターフィルターを装備しません。

 

本格サイクロンに該当するモデルやシリーズは、以下に記載の通りです。

  • 東芝トルネオW」「トルネオV」シリーズ
  • 三菱「風神」シリーズ:独自のサイクロン機構を搭載
  • シャープ「2段階遠心分離サイクロン」「パラレルフローサイクロン」を名乗るモデル:具体的には2014年以降の最上位モデル
  • パナソニック「ダブルメタルプチサイクロン」

 

個人的なおすすめは、三菱の風神シリーズ、特に2013年以降の小型化されたモデルになります。

ダストカップの構成が極めてシンプルであり、水洗いでのリフレッシュが非常に楽です。

三菱のTC-ZXD30P(風神)、2014年モデル。

 

紙パック式掃除機

有象無象に存在する紙パック式掃除機も、ダイソンの代替品となり得ます。というより、明確に選ぶ理由のない限りは紙パック式を選んだ方が良いです。

 

ゴミ捨てが楽で清潔性が高く、吸引力もサイクロン式を上回ります。また、清潔性の高さは中古であっても綺麗さを保ちやすいという事でもあり、価格や整備の面で導入の敷居が低くなります。

粉体ゴミの少ない日本の一般家庭においては、ゴミが溜まってきても目詰まりが少なく、吸引力に十分な余力があります。吸引力が落ちようとも、大抵の場合サイクロン式よりも強いです。紙パックの容積も基本的に1リットル以上あり、更には気流によって圧縮されるので、ゴミ捨ての頻度も1年間に2〜3回程度で済みます。

また、パーツが少ないので軽量化にも有利であり、現在は容量が少なめで軽量化されたモデルが主流となっています。

 

一方で、唯一不利になりがちなのが排気の臭いです。ゴミを溜め込む構造のため、時間経過によりどうしても臭いが発生してしまいます。高性能な紙パックを使用する事で軽減できますが、臭いの成分は分子レベルの大きさなので、どんなフィルターでも普通に通り抜けてしまうために対策はまず不可能です。

ただ、この点は臭ってきた段階で紙パックの交換という選択を取れるので、経費を気にしない分には問題ないと言えます。

加えて、吸い込んだゴミが見えないので、掃除した実感が湧きにくいのも人によっては欠点になるでしょう。

 

また、基本的にはゴミ捨てランプ等が点く前に紙パックを交換することを推奨します。ゴミ捨てサインとはすなわちモーターが過熱状態に陥る前触れであり、高負荷で稼働し続ける事で劣化や故障に繋がりやすくなるためです。

 

排気の綺麗さは基本的に紙パックの性能に依存するので、安い社外品の紙パックを使うと却って部屋の空気を汚すことになったり、ホコリが漏れ出して本体内部に詰まってしまい、故障の原因に繋がることにもなります。多少高くても純正品、できれば捕集性能の高い高性能なものを使用することを推奨します。

とりわけ日立・パナソニックには0.5μmの粒子を99.9%捕集できる性能保証がされた純正紙パック(日立GP-2000FS・パナソニックAMC-HC12)がラインナップされており、ダニや花粉に対しても十分な余力があるため、特におすすめします。

なお、紙パックの性能に依らず綺麗な排気を実現できるポストモーターフィルター搭載のモデル(日立の最上位機種など)も存在しますが、この場合性能の低い紙パックを使用するとフィルターを早く詰まらせてしまう事になるので、実質的に高性能紙パック専用となっています。

 

概ね各メーカー毎に以下の特色があります。

  • 日立:とにかく無難、最上位機種は静かで排気が綺麗
  • パナソニック:日立と並んで無難だが、カーボンブラシやファンモーターの供給は無い
  • 三菱:軽量モデルのみ展開し、日立やパナの軽量機と比べて個人での修理に向いている
  • 東芝:軽量モデルのみ展開し、ゴミ漏れへの対策や軽くて扱いやすいヘッドが特長
  • シャープ:軽量モデルのみ展開し、特徴的なアタッチメントが付属

 

過去のモデルにも目を向けると、三菱の雷神や東芝のメガホイール・クワイエといった面白いモデルもちらほら見られます。

また、今はなきサンヨーにも純正紙パックの販売があるので、現在でも問題なく使用可能です。

左から日立のロボットパック・パワースター・かるパック。三者三様で個性的です。